増えてきた「限定正社員」採用。普通の正社員と何が違う?

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限定正社員

ユニクロや日本郵政といった企業が先導し、日本でも「限定正社員」という働き方が定着しつつあります。

正社員並みの待遇を享受でき、しかも勤務地などの希望を考慮してくれる限定正社員制度は、2013年以降は安倍政権における雇用政策の柱の一つとしても注目を集めてきました。

限定正社員制度の推進には、非正規雇用者の待遇を改善するという目的があります。

聞いたことはあるけど、限定正社員のことをまだ良く知らないんです。
まずは限定正社員の基本的な情報や、メリットやデメリットをご紹介しますね。
 
その上でどのような人が限定正社員に向いているか、また働く上でどういった注意が必要なのかを見ていきましょう。

限定正社員とはどのような雇用形態なのか?

そもそも、限定正社員とはどのような雇用形態なのでしょうか。

簡単に言うと正社員の雇用条件のうち、勤務地、勤務時間、仕事内容等を限定した正社員という位置づけになります。

定年までの無期限雇用を前提としていますが、待遇自体は一般の正社員よりは低く設定されています。

限定する内容によって次のようにおおまかに分類できますが、企業によっては複数の要素を限定しているところもあります。
(勤務地と職種を限定、など)

勤務地限定社員

特定の事業所において、又は転居しないで通勤可能な範囲にある事業所においてのみ就業することを前提に雇用している社員。

職種限定社員

特定の職種にのみ就業することを前提に雇用している社員。

勤務時間限定社員

所定勤務時間のみ就業することを前提に雇用している社員。

一般職社員

主に事務を担当する職員で、おおむね非管理職層として勤務することを前提にしたキャリア・コースが設定された社員。

限定正社員のメリット

限定正社員のメリットを、働く側と企業側、それぞれの立場から見てみます。

働く側のメリット

  • 正規雇用となることで待遇が改善する
  • 勤務地や勤務時間のコントロールが可能となることによるワークライフバランスの実現
  • 雇用が安定することでモチベーションが上がる
  • 長期的な勤務が視野に入るためキャリア形成が容易になる
  • 育児介護などでフルタイム勤務ができな人でも就業機会を得ることができる

企業側のメリット

  • 事情により退職せざるを得ない社員の引き留めに効果がある
  • 地元に密着した人材採用により地域貢献をアピールすることができる
  • 多様な働き方を制度化することにより労働力が安定し採用コストが減少する
  • 正社員の労働条件に合わない優秀な人材を確保できる機会が増える
良いところばかりに思えるけど、デメリットもあるのよね?
もちろん、限定正社員制度はメリットばかりではありません。
 
危険なデメリットも内包されているので、次項でチェックして下さい。

限定正社員のデメリット

では限定正社員のデメリットを、働く側と企業側、それぞれの立場から見てみます。

働く側のデメリット

働く側から見たデメリットには以下のようなことが考えられます。

  • 勤務地限定正社員であれば、そのエリアから勤務が撤退した場合雇用が無くなる
  • キャリアアップの選択肢が正社員と比べて少ないためマンネリ感を感じる
  • 昇給や賞与などに大きく差をつけられる可能性がある
  • 正社員にとっては限定正社員が格下と感じ指揮命令系統が複雑になることがある
  • 正社員から懲罰的に限定正社員へ「格下げ」されるというような制度の悪用もあり得る
確かに勤務地限定だと、販売拠点などが無くなれば解雇になる可能性もあるわよね。

企業側のデメリット

  • 労務管理が複雑になる
  • 勤務地限定や職種限定の場合、事業所閉鎖、事業縮小等の場合の雇用の確保が難しい
  • 正社員と限定正社員の間で業務内容や処遇差からトラブルが発生する可能性がある
  • ステップアップを望まず、拘束されない働き方(アルバイトなど)をあえて希望する従業員への対応が難しい
このように、メリットデメリットが入り混じる限定正社員制度ですが、労働者側からは概ね歓迎され受け入れられているようです。
 
もちろん、制度設計には細心の注意が必要であり、正社員との待遇差があまりにも大きいとかえって人材が離れてしまうことにもなりかねません。
 
正社員と同等の待遇であることが魅力の一つであるため、いかに魅力的な制度設計を行うかは各企業の腕の見せ所と言えます。

一般的な正社員との賃金の差はどのくらい?

正社員との賃金の差
限定正社員はメリットと引き換えに、一般的な正社員に比べて待遇が低く設定されていますが、一体どのくらいの差があるものなのでしょうか。

厚生労働省が制度を導入している企業に行ったアンケート結果をもとに解説します。

勤務地限定では概ね正社員の8割~9割

2013年から行われている厚生労働省「多様な正社員」の普及・拡大のための有識者懇談会の企業ヒアリングによれば、勤務地限定正社員の賃金水準は、正社員と比べ概ね8割~9割と言えるようです。

ある製造業では、都道府県を3区分し、地域別賃金水準等を参考に100、95、90の賃金レンジ指数を設定していたり、一般の正社員には手当を加算したりして差を付けています。

職種限定の場合は給与テーブルが異なる

職種を限定したコースのある某建設業では、社員区分で賃金テーブルが異なります。

この企業では、生涯賃金で総合職100に比し、准総合職約80、一般職約55の水準となっています。

賞与の条件が異なる企業も

ある小売業の事例では、賃金テーブルは正社員と同じものの、賞与について計算上年間1月分の差があります。

これにより年収で正社員の約9割となるとのこと。

昇進はスピードには差がほぼ無いが、上限に差がある

厚生労働省の「『多様な形態』による正社員に関する研究会」企業アンケート調査結果によれば、限定正社員は昇進・昇格の上限が設けられているケースが約5割。

地域限定正社員に限れば約6割で昇進・昇格の上限が設けられています。

多様な働き方と、賃金上の差とを天秤にかけて、自分にとってメリットが大きいかどうかよく考える必要があるわね。

どんな人に限定正社員は向いている?

メリットやデメリットを踏まえ、どんな人に限定正社員という働き方が向いているのかを考えてみましょう。

例えば、次のような方には限定正社員が向いていると考えられますね。
  • 育児を主に担っている
  • 介護を主に担っている
  • 地元が好きで離れたくない
  • ワーク・ライフ・バランスを重視したい
  • 限定された業務範囲の中で、スキルアップしていきたい

限定正社員と介護

志向やライフスタイルに合っていれば、とても良い働き方よね。

政府主導で制度導入率は5割まで上昇中

限定正社員制度の導入企業

政府は企業の限定正社員制度導入を後押ししており、平成27年より限定正社員制度を導入し実際に採用すれば企業に助成金を支給するようになりました。

具体的には、1事業所につき採用1人当たり40万円の支給、また有期契約社員を限定正社員へ転換した場合は30万円が支給されるというものです。

厚生労働省が音頭を取って進めている正社員実現加速プロジェクトの一環であり、支援を受ける企業は年々増加しています。

このように限定正社員は現在日本企業の間で静かな広がりを見せており、厚生労働省の企業アンケート調査によれば約5割もの企業が限定正社員での働き方を導入しているとのことです。

冒頭で触れたユニクロや日本郵政をはじめ、化粧品メーカーのDHCや、教育大手の学研グループなどで地域限定正社員の導入を始めています。

勤務時間限定正社員であれば、Yahooが週休3日制社員の募集を開始したのが有名ね。
 
出勤日を減らしてワーク・ライフ・バランスを改善しているのよね。

化粧品メーカーの資生堂や、和食レストランのさとも短時間正社員制度を導入しており、中には短時間正社員ながらも店長を務める社員もいるそうです。

大手量販店の西友はパート社員を一律限定正社員へ転換する方法をとっており、非正規労働者を多く抱えた企業がこれに追随する動きを見せるなど新しい流れもできつつあります。

こうした働き方は新規採用はもちろん、既存正社員からの転換も認めており、企業は働きやすさをアピールする狙いがあるようです。
 
深刻な人材不足により、人材確保に企業が本腰を入れていることが働き方の多様化を後押ししていますね。

株式会社ファーストリテイリング(ユニクロ)の導入例

次に導入事例として、ユニクロの限定正社員制度をご紹介します。

ユニクロは2007年4月というかなり早い時期に限定正社員制度の運用を開始したために非常に注目を集めました。

ユニクロの場合、限定しているのは勤務地で、「地域正社員」という形態となっています。
 
転居を伴う転勤をせずに正社員として働くことができる制度で、希望する勤務地から離れずに働くことが可能です。

ユニクロの場合、店舗は国内のみならず世界に広がっているので、正社員は全国転勤や海外転勤があります。

しかし様々な事情で転居と伴う転勤ができない人は数多く存在します。

特に世帯を持っている人であれば配偶者や子供の都合もあるためそう簡単に転勤することができません。
限定正社員と育児

子どもがいたり、介護の要る親族がいたりする場合は、勤務地を簡単には変えられないものね。

そういった人は以前はやむを得ず契約社員やアルバイトといった非正規雇用で勤務していましたが、地域限定正社員に契約変更をするかたちで、以前よりも好待遇で勤務することが可能になったのです。

ユニクロの限定正社員は、正社員よりも若干給与が低いものの、キャリアアップ手段が豊富に用意されており、希望すれば全国勤務の正社員へと転換することも可能となっています。

ユニクロが同制度の導入により優秀な人材の確保を実現した成功例となったので、多くの小売業が限定正社員制度の導入を始めている状況です。

非正規雇用から正社員になれるチャンス!

非正規雇用から正規雇用へ
女性労働者を中心に、結婚や出産などによる家庭の事情により、正社員として勤務できなくなったり、退職を余儀なくされたりした人は数多く存在しています。

そのように優秀な人材が埋もれてしまうのは、社会にとって大きな損失です。

これまで非正規雇用の形でしか、社会復帰できなかったケースが、限定正社員制度によって、正規雇用となる可能性が増えていることは喜ばしいことだと思います。

今後、限定正社員制度の普及とともに、社会復帰を果たせる方が増えることを期待したいですね!

ワーク・ライフ・バランス実現に向けた企業の取り組みも参考にして下さいね。

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