
転職回数が多い人、と聞いてあなたはどんな人物像をイメージしますか?
「こらえ性が無く、少しのストレスですぐに仕事を辞めてしまう」
「気分屋で飽きっぽい」
「企業や自身の適性について判断が甘い」
皆さんも恐らくは同様なイメージを思い浮かべたのではないでしょうか。
実際には転職回数の多い方が全てこのような人物ということは決してありませんが、マイナス評価につながる先入観があるということは残念ながら否定できません。


ご自身が過去に何度も転職を重ねている場合は、もう転職ができないのではないか?と不安を感じるケースも多いと思います。
過去に転職希望者の方からは以下のような質問を多くいただきました。
- 転職回数が多い人は転職ができないのでは?
- そもそも転職回数の数え方がわからない。どう数えれば良いの?
- 転職回数は何回から多いと思われるの?
- 転職回数の平均値はどのくらい?

不安に思うのも当然ですが、転職回数が多くても転職は可能なのでまずは安心して下さいね。
不安や疑問に思う点を解消しつつ、マイナスイメージを払しょくするためにできることを知って、転職活動に取り組んでいけば大丈夫です。
今回の記事では転職回数が多い転職希望者のために役に立つノウハウをお伝えします。
転職回数に関する基本的な情報
では早速、転職回数についての疑問を解消していきましょう。
なぜ企業は転職回数を気にするの?
企業が転職回数を気にする理由は明白で、「採用した以上、少しでも長く働いて欲しい」と願っているからです。
人材採用にも教育にも相応なコストがかかるので、すぐに辞められてしまってはかないません。
長く自社のために働いてくれそうな人材を求めるのは当然と言えます。
「すぐに辞めてしまいそう」なイメージを持たれがちな転職回数の多い候補者は、ハンデを背負っていると自覚した上で工夫をすれば良いわけです。

ただし転職回数が多いことをネガティブに受け取るのはあくまでも日本固有の価値観であり、絶対的なものではありません。
続けて日本と海外の価値観の違いを見ていきましょう。
日本で転職がネガティブに捉えられる背景に終身雇用がある
転職が珍しいことではなくなった現在の日本でも、一社で職務を果たして任期を終えることを良しとする終身雇用に根差した価値観が未だに残っています。
退職金制度や定期昇給制度も終身雇用を前提としたものですし、企業が個人の転職回数を気にすることと同様に、個人は企業の離職率を気にするというのも同一の価値観上にあります。
次に視線を海外へ向けて見ましょう。
欧米文化圏では転職は好意的に受け止められる
賃金労働者の権利が憲法でしっかり守られている日本と異なり、欧米文化圏では雇用は不安定なもので、ある日突然解雇を言い渡されることも。
年俸制で、退職金もないことが一般的であるため、長く留まるメリットも感じにくい構造となっています。
個人は常に失業へのリスクヘッジを意識せざるを得ず、他の企業での可能性を模索したり、キャリアアップに励んだりしていくことになります。
転職を繰り返すことについても、キャリアさえあれば好意的に受け止められることが多いのです。
例えば、
- 積極的で行動力のある人物
- キャリアアップをしっかり考えてきた人物

一社に留まっている人材は、「転職したくてもできなかった人物なのではないか?」と思われる可能性まであるというのですから、日本との価値観のギャップは相当に大きいと言えます。
転職回数で苦戦している場合、外資系企業への転職も視野に入れると可能性は大きく広がります。
語学力に問題が無ければ、転職先の候補として外資系企業を考えてみるのも一案ですね。
転職回数の数え方
そもそも転職回数の正しい数え方がわからない、という方のために注意点をまとめました。
- 基本的には通算在籍社数から1を引いた数が転職回数となる(通算3社なら、転職は2回となる)
- 出向は転職回数に含めない。履歴書の職歴欄に記入する必要はなく職務経歴書で書けば良い。
- 転籍は転職回数に含める。通常の転職とは異なることがわかるよう記入に注意(※1)
- 契約社員の場合、個人と企業が契約した回数で数える。
- 派遣社員の場合、派遣元が同じであれば途中で派遣先企業が変わった分は転職回数に含めない。
- パート・アルバイトは履歴書に記入する必要はなく転職回数にも影響しない。(※2)
(※1)
○○株式会社 入社
××株式会社 転籍
履歴書にはこのように転籍であることを明確に記入します。
(※2)
パート・アルバイトしか経験が無い場合や、書かないとブランク期間があまりにも長く見えてしまう場合は記入してOKです。
転職回数の平均値ってどのくらい?
転職回数の多さを判断する指標となるようなデータが無いか探してみたところ、日本政府の統計を見つけたのでこれを基に算出してみます。
(2006年の政府統計:性、年齢階級・学歴・今の会社での仕事内容、転職回数別一般正社員の転職者割合)
結果は、次のようになりました。
日本人の転職回数の平均値は2.6回という数値が出ました。
年代別では、
20代 1.9回
30代 2.7回
40代 3.3回
(※10代及び50代以上の数値は割愛しました)
ちなみに同じ統計から転職回数の中央値を求めたところ、次のようになりました。
こちらも併せて参考にしてみて下さいね。
日本人の転職回数の中央値は4回です。
年代別では、
20代が3回
30代が4回
(※10代及び50代以上の数値は割愛しました)

一般的には、20代は3回、30代及び40代で3~4回転職を経験していると「回数が多い」と見られるケースが大半のようです。
応募書類作成のコツ
「この人は転職回数がちょっと多いな・・・」という印象を最初に持たれてしまうのが、書類選考です。
それでも会ってみたいと思わせるように応募書類を作っていきましょう。
履歴書の職歴欄は正確に、正直に!
転職回数の多さを自覚していると、不利な事実を隠してしまいたい気持ちになるかもしれませんが、短い期間であっても正社員・契約社員・派遣社員で働いていたことがあれば、もれなく履歴書に記入する必要があります。
記載内容と事実が異なることが発覚した場合、内定後でも解雇理由になることがあるので要注意です。
先述の「転職回数の数え方」の項目を参考に記入してみて下さい。
経験社数が多くなるほど、在籍期間などを誤記入しやすくなるので正確な記入に努めましょう。

職務経歴書は1枚~2枚に。最初に職務要約を持ってくると良い
経験者数が多い人は気を付けないと職務経歴書が長くなりがち。
多忙な人事に完読してもらうにはできれば1枚~2枚にまとめましょう。
要点をおさえてまとめた応募書類を作るのは、転職回数が多くなくても重要なことです。
職務経歴書の冒頭に「職務要約」の項目を設ける
一番の強みとなるキャリアについて通算経験年数やセールスポイントを端的にまとめると良いです。
バラバラな業界や職種についていた人でなければ、ある程度キャリアに一貫性があるはずです。
ステップアップしてきたことを強調し、転職回数に納得してもらえる可能性を高めましょう。
下に例を示します。
【職務要約】
私は通算〇年〇カ月、一貫してシステムエンジニアの仕事に従事して来ました。
20代は経験を積む期間と捉え、自身の成長に応じて会社を変えて来ました。
要件定義、設計、実装、テスト、運用に加え後輩エンジニアへの教育まで一連の経験を備えています。
逃げの転職ではなくキャリアアップが目的であったということを人事に理解してもらうことができれば、転職回数が多いことはもはやマイナスポイントではなくなります。
会社に貢献できることを書く
転職を経てきたことで、転職したことが無い人に比べて多種多様な経験を持っているとも言えます。
その経験を生かして志望する企業にどのような形で貢献できるかということを書けるとポイントが高いです。
志望企業についてよく企業研究を行っておくことで、内容が説得力を帯びるはずです。
転職するにあたってやむを得ない事情があった時
体を壊した、家庭の事情で引っ越しを余儀なくされたなど、やむを得ない事情があって転職した場合は、素直に書いてもいいと思います。
これで「飽きっぽい人」と思われることはなくなります。
もちろん今後は転職が必要な事態にはならない、ということを説明するのも忘れてはいけません。

転職回数が多いことが意外とプラスに変えられることもおわかりになると思います。
転職回数が多いことを面接で聞かれたときの対応方法
面接で「今までの転職回数が多いようですがなぜですか?」と聞かれたとき、どう答えればよいのでしょうか?
この質問をピンチからチャンスに変えてしまいましょう。
転職回数が多い理由を短くまとめておく
この質問は転職回数が多い人ならば必ず聞かれるので、回答をしっかり用意しておきましょう。
ここでのポイントは、「短く簡潔にまとめておく」ということです。
「一言で言うと、ステップアップがしたかったからです。」
「一言で言うと、過去の経験を生かして他の仕事をしてみたくなったからです。」
その内容のフォローとして、言いたいことがあれば言います。
その方が、面接官に内容があっさりと伝わりやすいのです。
長々と話すと言い訳がましく受け取られかねませんので、「簡潔に」を心がけて下さい。
転職回数が多いことで得られたことをアピールする
次に転職回数が多いことで得られたことをアピールして、マイナスをプラスに変えます。
例えば接客業としていろいろな職場を経験した人は、幅広い接客ノウハウ、店舗経営の知識を生かせます。
SEとしていろいろな職場を経験した人は、効率の良い仕事の仕方を知っているかもしれません。
会社の規模や社風によって仕事の進め方も異なるので、複数の職場で働いた経験を持つ方は適応力やコミュニケーション力が高いとも言えます。
転職回数が多いことのマイナス面ばかりに目を向けず、過去の職場での経験を思い出して、自分なりに得られた経験をアピールしてみましょう。

目的意識を持って転職していればマイナスにはならない

私が過去に会った転職希望者Aさんのケースを例に挙げて説明します。
私のいる転職エージェントにAさんが相談に来たのは、彼が20代後半の時。
既に3回転職を経験していましたが、私はAさんの職歴を見て、転職回数が多いことがマイナスにはならないと感じたのです。
転職するたびにAさんが確実にキャリアアップしていたからです。
一貫してSEとしてのスキルを磨き続けてきたことが評価される
AさんはSEで、最初はソフトハウスでスキルを磨いていました。
不幸にもブラック企業と呼ばれるような職場環境で、数年で体力と精神面に限界が来たためにAさんは転職を決意。
この転職で職場環境を改善したAさんは、2社目の職場でも学べることはすべて学ぶ姿勢で業務に取り組みました。
そして満を持して次の転職をします。
過去の経験を活かして年収アップを実現し、スキルをさらにグレードアップするためでした。
3社目ではリーダー的な地位になり、年収も上がり順調にキャリアアップをしていましたが、より大きな仕事がしたいと思うようになったAさんは転職を意識するようになりました。
Aさんはこれを最後の転職にしたいと願って、転職エージェントに相談に来られたのです。
転職エージェントのアドバイスで大企業へ

大企業は人材の定着率が良い反面、一つのやり方しか知らない人ばかりになる傾向もあります。
そのためAさんのように社会に揉まれた経験が豊富な人材は、職場に新しい風を送り込む役割を期待され採用されることがあるのです。
Aさんもその例にもれず、豊富な経験を生かして大企業への転職を果たし、現在も活躍しています。

転職回数だけでキャリアアップをあきらめるのはもったいありません。
ご自身のキャリアにどんな可能性があるのか、第三者のアドバイスをもらうと思わぬ方向に可能性が広がることも多々あります。
ご友人やご家族に相談をするように、転職エージェントのキャリアアドバイザーもぜひ気軽に相談相手として検討してみて下さいね。